1ヶ月ほど前からクロクマが活動し始める。
長い冬眠から覚めたばかりで、野良犬のようにやせ細っていた。
人口300人のキンコーラスの村には、スーパーなどの店がない。 道路のなかった昨年までは、水上飛行機または船でプリンス・ルパートまで買出しに出たものだ。 1ヶ月から2か月分の食料や雑貨を買い込むので大変な量になる。 船が運行しない日には水上飛行機を使うのだが、1パウンド(約454グラム)に49セント(約40円)の輸送費が加算されるので、重量のある水物は出来るだけ避けることとなる。
この村の住民はニスカ族に属するのだが、ナス河上流の村との交流は川を船で上る方法のみであった。 もともと4家族が上流の村から分かれて、この地に定着したのが1890年代。 この村の住民は政府との領土問題などでは、ニスカ族に属せず、近隣のシンプシャン族などと「ノースウエスト・トライバル・カウンセル」をつくり対応していた。 ニスカ族がカナダ連邦政府とBC州政府から、独立する為の活動が活発になったのが1980年代であるが、政府側から「ニスカ族の内部が一つにまとまっていないのでは相手にならない」と言われ、上流の村々はキンコーラスの懐柔に入った。 1983年、ニスカ統一の為に約束されたのが、「村に繋がる道路を作る」と言うことであった。
ニスカ族は政府に対し100年以上も執拗にロビーし、カナダの先住民族として最初の自治権を獲得したのが2000年5月。 そしてキンコーラスに道路が完成し正式にオープンしたのが2003年5月であった。 未舗装の凸凹やぬかるみの道で、急勾配(最高16%!)の坂道が多くあるが、上流の村そしてテラスの町までいつでも出かけられるようになった。 が筆者も開通以来既に、3本のタイヤを駄目にしている。
Nisga'a ハイウェイ沿いに出没した母熊
人の入ることのなかった地域に道ができ、路肩には土地の侵食を防ぐために草が植えられている。 日中でも暗い森の中と違い、太陽を十分に浴びる草はどんどん生長し、クマの格好のえさとなる。 クロクマは雑食動物であり、90%以上の食物は草や木の実である。
スカンク・キャベッジの中で作者の臭いを嗅ぐ
町まで車で買出しに出た。
片道170km、2時間半。
往路に5頭、復路では8頭がのんびりと草を食んでいた。
クマたちにとっても自動車が珍しいのであろう、充分観察できる(どちらが?)。
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