クロクマが姿を現し始めて1ヶ月半、車を走らせるとクロクマが新芽を食べてい
るところに遭遇する。 この辺りには「クマの写真を撮ろう」などと言う物好きは居ないので、皆クマの脇を凄いスピードで走り去っていく。 それでも車を停
め撮影に入ろうとすると、たいていのクマは採食をやめ、森の奥へ隠れてしまう。
日が陰る頃になると森からいっせいにクマが採食しに道路脇まで出てくるようで、先週の午後9時過ぎ、10分あまりの間、距離にして数キロだろうか、12頭のクロクマが次々に現れ
た。 1頭だけの個体や、2〜3頭の子連れの母親であった。 みな車を認知するとすぐに逃げてしまったのだが、その後帰宅途中家の裏の道に通りかかると、
1頭のクマが夢中でタンポポを食べていた。 人間になれているのだろうか、食べるものも豊富にあるからか、逃げるそぶりも無く一生懸命にエネルギー充填と
いった感じであった。
クロクマ全てが「真っ黒」と言うわけではなく、茶色かかったシナモン・ベアー、青みかかったブルー・ベアー(グレーシャー・ベアー)、白いカモーディー・
ベアー(スピリット・ベアー)など多種の色がある。
ブリティッシュ・コロンビア州北西部のNass
Valleyからテラスの街付近、さらに南部のインサイド・パッセージ付近にのみに生息するカモーディー・ベアーは、白いクロクマとして有名で、2010
年バンクーバー・オリンピックのマスコットの候補にも挙がったほどである。 いわゆる白子とは異なり、劣性遺伝の遺伝子を持つ両親が交配したときのみに白
くなるらしい。 遺伝子を持っているからと言って必ずしも白とは限らず、母グマが白でも子グマは兄弟の中でも白と黒が一緒に生まれることがある。 全体で
数百頭程度しか生息していないらしいのだが、インサイド・パッセージでは分布がはっきりとしており、観察ツアーがあるので、かなりの確立で見ることが出来
る。 内陸のNass
Valleyやテラス付近では、1年のうちでも数回目撃される程度で、後はツキ任せと言うことだ。 先日もアメリカからのキャンピングカーで旅行していた
老夫婦が遭遇し写真を撮ったのだが、話を聞いたところ彼らは「どれだけ幸運だったのか」がまるで分かっていない様子であった。
カモーディー・ベアーの遺伝子を持っているのか、たまに手足に白い靴を履いているような妙なクロクマを見かけることがある。 先週見かけたものも、母グマ
と1頭の子グマは手足が白かったのだが、もう1頭の子グマは全身真っ黒であった。 母グマには胸に大きな丸い白い部分まであった。